研究内容

ここでは、現在進行している研究プロジェクトをご紹介します。私達が独自に開発した代謝物質(メタボライト)の一斉測定法(メタボローム解析技術)やバイオインフォマティクス手法を中核技術として、システム生物学やゲノム科学、環境・エネルギー・医療・食品などの様々な分野の先端研究に挑戦しています。

研究内容をより詳しく知りたい方は、「論文ハイライト」や「最新ニュース」もご覧下さい。

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システム生物学

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飛行機の部品であるネジや鉄板、ケーブルなどを個別に1つ1つ詳しく調べても、「空を飛ぶ」という現象は見えてきません。生命現象もこれと同じで、生物を構成する部品を1つ1つ見ていても、「生きる」という現象には迫れないのです。システム生物学は、細胞の遺伝情報(ゲノム)、それによってコードされるタンパク質群(プロテオーム)、代謝物質群(メタボローム)、そしてそれらを取り巻く環境条件を一つのシステムと見なし、細胞と細胞の周辺環境、およびそれらの動的挙動を統合的に研究・解析することで、生命現象を本質的に理解することを目指す近年注目の学問分野です。

私たちの研究室では、世界に先駆けて細胞全体の振る舞いをコンピューター上でシミュレーションするためのソフトウェア「E-Cell」を開発しました。ゲノム・トランスクリプトーム・プロテオーム・インタラクトーム・メタボローム等の網羅的な生命情報をコンピューター解析することで、微生物や人間の心筋細胞・神経細胞・赤血球などのシミュレーションをおこない、最先端の研究成果をあげています。


地球環境分野

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・大気中の二酸化炭素から光合成で軽油を生産するという「究極のエコ微生物」である微細藻を採取、培養してその代謝を分析し、より効率よく軽油を生産できるように品種改良し、エネルギー問題解決の実現を目指す。

・地球環境に優しく、さらに既存の素材よりも強靭なクモの糸を人工的に微生物に大量生産させる技術を開発し、産業素材革命を実現することを目指す。

・地球上には高温の温泉や高圧の深海底など様々な環境が存在し、そこには多様な微生物が存在し生態系を構築しているが、これまでの科学ではその1%程度の微生物しか調べられていない。我々はこのような環境にどのような生物が存在し、どのような遺伝子を持っているのかを網羅的に調べることで、地球上の様々な環境における生態系の理解を目指す。

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システム医科学

・胃がん患者の血液と健常者の血液のメタボローム解析を行い、その差を見ることによって胃がん患者特有の血中物質を同定し、診断マーカーとして実用化する。

・慶應大学医学部産婦人科や眼科、生化学教室、免疫学教室など多くの医療機関との共同研究で、さまざまな疾病の患者血液や組織をメタボローム解析し、新規診断マーカーを発見する。

・多数の血液や唾液を網羅的にメタボローム解析することによって、特定の物質量と様々な疾病との相関を調べ、包括的な次世代型健康診断技術を開発する。

・赤血球細胞のメタボロームやプロテオームを網羅的に分析してその代謝を理解し、コンピュータ上に再現する。輸血用血液をより長期に保存するための技術を開発する。

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先端健康科学

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・漢方薬やハーブなど、科学的根拠がよく理解されていない東洋医学的な食品をメタボローム解析し、含まれる成分物質を同定し、それらと効能との関係を解明する。

・果物や野菜など、様々な農作物に含まれる健康機能性物質(ポリフェノールやGabaなど)を網羅的に分析・比較し、どの産地のどの銘柄にどの物質が多く含まれているかを解析する。

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ゲノム科学分野

・地球上の多種多様な生物種のゲノム配列を網羅的に解析し、DNAが細胞核内でコンパクトに折りたたまれる機構の解明や、無駄な配列とよばれるイントロンが高等生物になぜ多数存在するのか、生命進化の根源について研究する。

・人工細胞の合成や生物機能の解明に向けて、ゲノムを工学的に自由自在にデザインするための研究開発をおこなっている。これまでに、生物のゲノムを丸ごと他のゲノムに導入するメガクローニング技術等を開発し、異なる2種類の生物ゲノムを一つの細胞の中に組み込んだキメラ生物の合成に成功している。

その他、数多くのエキサイティング・チャレンジングな研究が進行中/開始予定です。
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研究環境

先端生命科学研究会では、生物学的な実験をおこなう先端生命科学研究所(IAB)と、コンピューターによる解析をおこなうSFCの、2つのキャンパスを主な拠点として研究をおこなっています。IABとSFCはテレビ会議システムにより密接に連携をとっており、ゼミや講義、研究の打ち合わせ等もテレビ会議システムにより遠隔で実施することができます。学生は自分の研究を遂行するために一番良い研究環境を選択できます。

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